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第一章・22 ~凌辱~
「そこだ。行け! 浅い、もっとタメろ! ああッ!」
愛が魔導学校に来て一週間が経っていた。
毎日行われる魔闘士候補生の闘技会に顔を出しては、観戦することが明の日課になっていた。
拳を握りしめ、まるでボクシングのセコンドのようにわめきながら愛の試合を見守る。
しかしながら、この魚座の少年が勝つことはまだ一度もなかった。
「やけに熱心だな。どういう風の吹き回しだ?」
「おぅ。柊一か」
隣に座る柊一を一瞥しただけで、明はまた拳を握りしめる。
柊一は、その視線の先を見て頷いた。
いつもなら、開会の儀にしかたなく出席するだけで後は知らんぷりの明が、毎日闘技場に通う。
その理由が、たった今柊一にも解かったのだ。
「なるほど。目当てはあの子か」
柊一は腕組みをして試合を眺めながら明に話しかけた。
「初日に貧血を起こした候補生だな。動きはいいが、残念ながらパワーが足りない」
「まあな」
「もう少しよく食べて、基礎体力をつけた方がいいな」
「まあな」
「しかし、女子にしてはいいファイトだ」
「は?」
おいおい、と明はそこでようやく柊一の方を見た。
「勘違いするな。あいつは男だ」
「何ッ!? 嘘だろ!?」
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