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第一章・30

 その後解散となり、双子座の入江(いりえ)が魚座候補生の名が連ねてあるリストを手に、それぞれの配置を決め始めた。 「オレはいいや、入江さん。張り付く相手は心当たりがあるから」 「心当たり? 誰だ。左近充、リストも見ずに」 「ん~、まぁ、そのうち紹介すっからよ」  校長室を出て行こうとする明の腕を、柊一が慌ててつかんだ。 「勝手なことをするな。一大事なんだぞ。もしまた魔導薔薇が咲かずに終わるようなことになったら」 「大丈夫だって。必ず咲くさ。いや、咲かせてみせる」  明は、自分でも不思議なくらい確信を持っていた。  魚座の大魔闘士になる者は、すでに決まっているのだ。 「いいだろう。だが、名前くらい教えるんだ」  少し厳しい目になった入江に、明はしかたなく答えることにした。  できれば後で、あっと驚かせたかったのだが。 「新規候補生の、岬 愛だ」 「あの貧血候補生か!?」  その場にいた全員が口をそろえた。 「……貧血、って言うな!」  あれは女子だろう、いや体形が男だ、と、てんでバラバラに勝手な事を言い始めた大魔闘士たちだが、だれひとりとして確かに見込みがある、とは口にしない。  明は舌打ちをして、ずかずかとその場を後にした。  今に見てろよ、と心の中で大声を上げていた。

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