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第一章・31

 いつもならば、夕刻になると明がどこからともなくふらりと目の前に現れるのだが、と愛は考えていた。  わずかな自由時間に、夜に会う約束をするのがすっかり習慣になっていた。  気付かないうちに、『期待する』ということを覚えていた自分に、愛はとまどった。  自分は期待などしてはいけないのだ。  期待はいつも裏切られるものなのだから。  期待せずにいれば、落胆もせずに済む。  生きていくうえで必要な術だったはずだ。  でも、と愛は思った。  落胆は、次の期待への芽になる。  きっと、そのうち現れるはず。そう考えて心を温めるのは心地よいものだった。 「よぅ」  背後からかけられた声に、愛は飛び上がった。  この声は、明ではない。  歓迎できない、不吉な声だった。  おそるおそる振り返ると、果たしてそこには見たくない顔が揃っていた。  蟹座予備生の少年たちだ。 「毎日がんばってるじゃねえか。たまには俺たちと息抜きしようぜ」  初日、彼らには酷い目にあわされた。思い出したくもなかった。  逃げよう、と愛は思ったが、気づくと周りを囲まれていた。 「言う事をちゃんときけば、痛い事しねえよ」  ニヤニヤと笑いながら、輪を狭めてくる少年たちの顔は醜悪だった。

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