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第一章・35
「いるかな~。いねえかな~」
唄うように口ずさみながら、明は校内はずれの古井戸へ足を運んだ。
少し遅くなってしまったが、もしかしたらまた愛が水浴をしているかもしれない。
今後は、大手を振って愛と一緒にいられるのだ。
愛の師匠がうだうだ文句を言ってきても、そこは魚座候補生から目を離さないという大魔闘士の任務なのだ。
愛は、いた。
だが、様子が少し、いや大変おかしかった。
頭からすっぽりと毛布をかぶり、うつむいてせっせと手を動かしている。
「どうしたんだ」
走り寄った明に、愛はいつものように微笑んだ。
「服が、破れちゃったんです。だから繕って」
「破れた、ってお前」
破れた、というより、破られた、と言った方が正しい。
意図的でなければ、こんなに変な方向にずたずたに引き裂かれるものではなかった。
裸に毛布を被って、もくもくと手を動かしている愛を見て、明の胃はしだいに重く熱くなっていった。
「あいつらだな? あいつらが、また何かしたんだろ!」
「はい! 終わり!」
ぱん、と音を立てて生地を伸ばし、愛はすばやく衣服を身に着け始めた。
体中擦り傷だらけで痛々しかったが、愛の声は明るかった。
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