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第一章・36
「私、今日初めて『イヤです』って言えたんです」
「お前」
「ちょっとだけ、強くなったでしょう?」
ふふ、と愛は短く笑ったが、明が手を伸ばすとびくりと体をすくめた。
瞳から、みるみる涙がふくらんでくる。
明の怒りは頂点に達した。
「許せねえ。あいつら」
花迷宮のバラは、確かに目の前にいる。
だが、そのバラにはまだ棘がないのだ。
美しく咲き誇っても、棘がなければ誰にでも簡単に手折られてしまう。
(棘ができるまで、オレが守る)
明にもまた、これまでにない感情が生まれていた。
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