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第一章・37 ~覚醒~

 朝から魔導学校は、血なまぐさい事件に騒然としていた。  早朝、五つの変死体が発見されたのである。  被害者は全員蟹座の予備生だった。  嫌疑は真っ先に明にかけられた。  動機としては、自分の大魔闘士の座をおびやかす存在の抹消。  そして予備生とはいえ蟹座を守護星座にもつ実力者たちを、一度に五人も殺害できる者などそうそういないという理由があげられた。 「遺体は損傷が激しい。四肢を折られ、十本の指と爪の間に針金が刺してあった」  報告書を片手に、入江が明の方をちらりと見やった。  明本人は、まるで他人事のような顔をして聞いている。 「死因は窒息死。局部が切り取られ、喉につめられていたらしい。第一発見者は、まだ医療所で寝込んでいるそうだ」 「そりゃ、お気の毒様」  人を食ったような返事に、入江は声を高くした。 「被害者は、蟹座の予備生だぞ。何とも思わないのか? よく一緒に行動した仲だろう」 「わんわん泣けば気が済むのかぃ? オレはあいつらを仲間だと思ったことは一度もねえ」  

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