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第一章・38
だいたい、と明は続けた。
「あいつらの素行の悪さに一番手ぇ焼いてたのは、あんたじゃねえか。厄介払いができて、せいせいしたんじゃねえの?」
挑むような明の目に、入江は取ってつけたような言葉を返すしかなかった。
「しかし、予備生がいないと、万が一お前に何かあった時の蟹座の大魔闘士が」
「予備生、つったってよ。あいつら他よりちょいとばかし霊感が強くて、ユーレイが見えるくらいのもんだったじゃねえか。戦力になるかよ」
どこまでも食えない明に、入江は打つ手を失った。
へ、とひとつ笑って、明はひらりと片手をあげた。
「話は終わりだな。じゃあ、オレは行くぜ」
「待て。別件がひとつある」
「なんだよ。面倒くせえ」
「岬だが、魔闘士の候補生から外れるかもしれん」
「なんだって!?」
明は目の色を変え、入江に詰め寄った。
「どういうことだよ」
「上の方から、彼を神官候補生にどうか、との打診があったんだ。師匠も快諾しているらしい」
「神官、だと。冗談じゃねぇ」
「しかし、あの子はどちらかといえばその方が向いているんじゃないのか」
明は、入江の言う事などまるで聞いていないように眉を寄せて何か考えている。
やがて顔をあげると、そのまま黙って部屋を出て行った。
恐ろしい形相に、入江は胸騒ぎを感じた。
この一件、明は限りなくクロに近い。
また何か事件を起こすのではないか、と嫌な予感がしていた。
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