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第一章・42
愛は、必死になって明にすがった。
これ以上、明に殺人などさせたくはなかった。
「今夜から夜伽はお断りします! 私はもっと強くなります! だから人殺しはやめてください!」
「……泣くな」
はっ、と愛は頬に手をやった。
いつのまにか、また涙がこぼれている。
止めようとしても、どんどん涙はあふれてくる。
今まで溜めていた分が、堰を切って流れ出すように。
悪かった、と明は愛が泣きやむまで、肩を抱いていてくれた。
手のひらの暖かさが嬉しくもあり、悲しくもあった。
自分のせいで、この手は血塗られてしまったのだ。
もう二度と、そんな事はさせたくなかった。
愛が泣きやむと、明はその肩をポン、と軽くたたいた。
「じゃあ、今夜は九時に会えるな?」
「今夜は、九時から魚座候補生の集会があるんです。でも、それが終わったらすぐ会いに行きます」
「約束だぞ」
「はい」
私は強くなりたい、とこの時愛は心から願った。
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