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第一章・43

『魚座の会』からのお誘いに、愛は淡い期待を感じていた。  同じ魚座を守護星座にもつ人間が集まるのである。  今まで感じたことのないような連帯感があるのではないか。  同時に、一抹の不安もあった。  愛は、座学中ずっと本に隠して一枚のカードを見ていた。  魚座のシンボルマークが描かれた、小さなカード。  そこには、時刻のみが書かれていた。集合場所は記されていない。  カードを人目につかないよう、愛にそっと渡した少年の目を思い出す。  小声でささやかれた集合場所は、いつも明と会う井戸よりも遠くはずれた校区の端だった。  秘密裏に開かれる集会に、違いなかった。 「では、今日はここまで。予習復習を忘れずに」  講師の言葉に我に返ると、周りはすでにざわめき始めていた。  くよくよ考えても仕方がない、と愛も席を立つ。  教室の表に出ると、明が待っていた。 「行くのか?『魚座の会』」 「はい。ちょっと顔を出してきます」  明は、それきり何も言わずに黙っている。  黙って愛の顔を見ている。  愛も、何も言わなかった。  ただ、黙って明の視線を受け止めた。

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