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第一章・50

 愛は、自分でも驚くような大声を出していた。  何があろうと魚座の魔闘士になるのだ、という決心がここで固まった気がした。 「それなら、辞退したくなるような気持ちにさせてやるよ!」  紗英がそう言い終わる前に、愛は痛烈な拳を腹に浴びて後ろに吹っ飛んでいた。  派手に地面に叩き付けられ、息が一瞬止まった。  両脇から腕が伸びてきて愛を立たせたが、その乱暴なしぐさに、助け上げられたわけではないことはすぐに解かった。  二人の魚座に両側から支えられたまま、愛は紗英の拳や蹴りを何発も受け続けた。 「どうだい。気が変わったかい」 「いやです!」  返事を聞くと紗英はにやりと笑い、顎で他の魚座に合図をした。魚座たちは交代で愛を痛めつけ始めた。  顔のように、外から見て暴行の跡が残るような部分は避けて打撃をあたえるところがしたたかだ。  愛は痛みを受けながらも、頭の中は妙に冴え冴えとそんなことを考えていた。  このくらい、たいしたことはない、とも考えた。  どんなに殴られようが、すべて想定内の痛みなのだ。これ以上の苦痛を受けたことなど、数限りなくある。 (きっと今まで受けてきた痛みは、今日のこの日を耐えられるように仕組んであったことなんだ)  そう思うと、魚座の大魔闘士になるのだ、という決意はますます強固なものとなった。  呻きはするが、決して悲鳴はあげない。  どんなに殴っても蹴っても、眼が死なない愛に、魚座たちは動揺を見せ始めた。

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