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第一章・56
後から後から、オーラにひかれた魔闘士たちが集まってくる。
皆バラに魅入り、その香りに陶酔している。
「このままではいかん」
入江は愛の元へ進んだ。
「岬」
「双子座の入江様」
バラの花に囲まれた愛は、具合が悪くなるほど美しかった。
入江は、軽いめまいを覚えた。
バラの香気を吸いすぎたのか、それともこの少年の美しさにあてられてしまったのか。
どちらにせよ、急がねばならない。
入江は腰を落として、愛の眼をのぞきこんだ。
「このバラの花々を消すんだ。できるね?」
「どうやって、消すのですか」
「心の中にしまうんだ。やってごらん」
「心の中に、しまう」
愛は、眼を伏せてうなずいた。
ほどなくして、一面を覆っていたバラの花々はその輪郭を薄め、まるで霧のように消えて行った。
後には、何事もなかったかのように静寂が戻り、月の光が煌々と大地を照らしていた。
「魚座か」
「魚座だ」
集まった大魔闘士が口々につぶやき、愛を囲んだ。
新しい仲間が、誕生したのだ。
真ん中に陣取って、愛の一番傍にいる入江のことが明はちょっと気に入らなかったが、まぁ細かい事はこの際大目に見よう。
なんたって、自分と愛には同質のオーラのつながりがあるのだから。
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