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第一章・59 ~舞踏~

 愛は走っていた。  真っ赤なバラの咲き乱れる道を、その花びらを踏みしだきながら必死に走った。  走っても走っても、追いすがってくる14本の腕。  その手から逃れる為に、際限なく走り続けた。  しかし、それももう限界だった。  息が切れ、心臓が口から飛び出しそうだ。  追ってくる腕の持ち主は、きっとあの七人の魚座。  捕まると、また体をさいなまれることは痛いほどよく解かっている。  でも、もういいのではないか。  それが自分の運命ならば。  今までそうやって生きてきた。  これからもそうだとしても、いつもどおり。  そう。いつもどおり、心の扉を閉ざしてしまえば何も感じないのだから。

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