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第一章・61

 開けろ、開けろ、と頭の中でわんわんと声が響く。  愛は、もう何をどうやって開けていいのかわからなくなってきた。  そこでようやく、自分が眼を閉じていたことに気づいた。 (あれ。なぜ私は目を閉じてるんだろう。今まで閉じてたのかな。閉じてるのに、どうして見えるのかな)  つじつまのあわないことだらけだ。  あぁ、きっとこれは夢だ。  夢なら、覚まさなきゃ。  愛は、ゆっくりと眼を開けた。 「開けろ! 目を開けろ、愛! 死ぬんじゃねえ!」 「やめろ、明! そんなに揺さぶったらホントに死ぬぞ!」  愛は、がくがくと揺さぶられる体を、まるで他人のもののように重く感じた。  かすむ目をぱっちりと開くと、そこには自分に取りすがる明の顔が。  隣に誰かいる。  あぁ。この方は、たしか山羊座の冬月様。  ぼんやりとではあるが、意識が戻ってきた。 「おい。良く見ろ明! 目を開いたぞ!?」 「何ッ!?」  ふたりの目が、愛の目に映る。  冬月様の目は、真っ黒なんだ。  左近充様の目……なんだか、白目が少し赤い。  もしかして、泣いてる? まさか。

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