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第一章・64
まったく、このところの自分はどうかしている。
この喜怒哀楽の激しさは何だろう。
最たるところがこの今だ。
まぶたを指の腹でおさえる。
こぼれこそしなかったが、涙が。
そう、涙がこみ上げてきたのだ。
愛が無事だとわかった瞬間に。
泣く?
泣く、なんてあるのか。このオレに。
涙なんて、あくびをした時以外に出した事など無かったのに。
明は、入江の言うことにおとなしく耳を傾けている愛を見た。
愛。この不思議な存在は、あっというまに明の心を占領してしまった。
魔闘士に、しかも同じ位の、魚座の大魔闘士になった愛。
これからは、ずっと一緒にいられるのだ。
しかし、気がかりなこともひとつある。
そして、それが的中して目の前に現れた。
「まずは魚座の候補生として登録される。しばらくはその立場で修業を重ねて、ゆくゆくは……」
入江の言葉に、愛はハッと顔色を変えた。
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