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第一章・67

 まさか新規の候補生が、しかも修行を始めて半年も経たないような者が魚座の大魔闘士として目覚めるとは、と校長は唸った。  10年近くかけて、ようやく魚座の候補生に昇格した者もいるというのに。  それどころかその長年修練を積んだはずの者たちを、すべて死なせたというのだからまったくもって運命というものは残酷である。 「お前が魚座の魔闘士になるために、尊い犠牲がでたことを忘れぬように」 「はい」  こうべを垂れて、校長の前にかしずく愛は、まだ魔装束を身に着けてはいない。  これから厳しい修行が待っている。  心身ともに鍛えられ、校長が認めて初めて身にまとう事が許される。  しかし、たとえ校長が認めようとも、まずは魔装束に認められなければ話は始まらない。  人が魔装束を選ぶのではなく、魔装束が人を選ぶのだ。  これから愛は、はたして魔装束に認められるのかどうかが試されるのだ。 「花迷宮の奥深くに、バラの巨木がある。そこに、魚座の大魔導衣が眠っているはずだ」  それを持ち帰るように、と校長は愛に告げた。  魔装束が認めた人物でなければ、その場からびくとも動くまい。 「立会人は」  教皇の目の前には、ずらりと並んだ大魔闘士の面々があった。  やはりここは、年長者の入江か、とおさまりかけたところで考えを改めた。  この中にひとり、まるで新しい魚座に寄り添うように輝くオーラを持った者の存在に気付いたからだ。

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