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第一章・69

「俺が来られるのはここまでだ」  花迷宮の入り口で、柊一は足をとめた。  できれば最後まで付き合いたいところだ、と思ったが。  愛と並んで歩くのは、ずいぶんと楽しかった。  そばにいるだけで、人の気持ちを和やかにする人間というものがこの世にいようとは。  それは、明にとっても同じことなのだろう。  こんなに屈託なくしゃべり、笑う明を見るのは初めてだった。 「冬月様、ありがとうございました」  愛が、ていねいに頭を下げる。 「明をよろしくな」  そう柊一が言うと、明は軽く憤慨したように身を乗り出した。 「お前、それは逆だろう」 「いや、岬が来てからお前は変わった。今まで75度くらい斜に構えたやつだったが、30度くらいになだらかになった」 「どういう例えだ」 「さあ、早く行かないと日が暮れるぞ」  花迷宮に入ってゆく二人の姿を見送りながら、柊一はどうか魚座の大魔導衣が愛を受け入れるように、と願った。

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