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第一章・74

「明、何か聞こえない?」 「大魔導衣の共鳴の音だ」  見ると蟹座の魔装束がひときわ強く輝きを放っている。  ゆるやかな明滅をくり返し、まるで鼓動を打っているかのようだ。 「きっと魚座の魔装束に反応してるんだ。探そうぜ」  明は、バラの巨木の根元まで進んだ。  愛も後に続く。  二人はぐるりと木の周りを廻ってみたり、絡み合った枝の奥を覗き込んだりして魚座の大魔導衣を探した。  派手な金糸銀糸に輝いているのなら簡単に見つかりそうなものだが、魚座の魔装束は見当たらない。  強い香りのせいもあって、すっかり疲れてしまった明は、木の根元にごろりと横になった。  日はすっかり沈み、空には大きな月が上がっていた。  月の明かりの届かないところは星で埋め尽くされ、まるで今にも零れ落ちてきそうなくらい輝いていた。

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