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第一章・78
「よく似合うぜ」
「ふふふ。そう?」
愛は、その場でくるりと廻ってみせた。
「すごい。全然重くない。ううん。逆に、体が軽くなった感じ」
やはり、大魔闘士というものは生まれながらに決まっているものなのか、と明は思った。
蟹座予備生が万が一の事態に備えて蟹座の大魔導衣を身に着ける訓練をしたことがあったが、全員がその重みで自由に動くことすらできなかったのだ。
愛は光輝く魔装束を身にまとい、くるくると軽やかに踊っている。
こいつはこうやって奉納の舞いでも踊ってた方が似合ってる。
だのにどうして、最高位の兵隊なんかに選ばれてしまったんだろう。
『じゃあ、私も一緒に地獄へ行く』
愛の言葉が明の心に甦った。
二人で地獄に堕ちるために、二人して大魔闘士になったのだろうか。
(好きにしやがれ)
明は、神に向かって毒づいた。
(地獄だろうが修羅の道だろうが、こいつと一緒ならどこへでも行けるぜ)
そう、神を挑発してみせた。
やがて、それが現実のものとなるのも解からずに。
明は手早く大魔導衣を身に着け、愛の手を取った。
ステップを踏み、腕をからませ、時には大きく離れ、魔装束のリズムに合わせて踊った。
大きな月の光が、血塗られた歴史を持つ大魔導衣をきらきらと美しく輝かせる。
今夜だけは、殺戮とは無縁。
星空を舞台に、二人はいつまでも踊り続けた。
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