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第二章・4
「や、ダメ。やっぱり、これ返す!」
愛は一旦手にしたシュークリームを、明に押し戻した。
そうこうしているうちに、柊一は二人の元まで近づいてきた。
「そろそろ休憩時間だと思ってな。愛、どうだ? 調子は」
「平気です。まだまだやれます!」
またそんなウソを、と明はやれやれと首を振った。
しかし柊一はそれにうなずくと、手にした水筒を愛に向かって差し出した。
「レモン水だ。疲れがとれるぞ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに水筒を受け取ろうとする愛の前に、明は先ほどのシュークリームを突きだした。
「まずはこいつを食え。でなきゃこの後の体力が持たねえぞ」
「何だ、それは」
柊一が不思議そうに丸い包みをつつく。
「シュークリームだ」
手をばたばたさせて慌てている愛を見て見ぬふりをして、明はそう正直に告げた。
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