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第二章・6
それは、と言いかけて、明は口をつぐんだ。
師匠に見出される前に、魔導学校に来る前に、ろくな生活をしていなかったからだ、とは柊一には打ち明けられない。
私が体を売ってたことは、冬月様には絶対に言わないで、と愛に強く念を押されていた。
打ち明けたからと言って、柊一が愛への態度を変えるとは思えないのだが。
「ま、そのうち解かる時も来るだろうよ」
明は巧い事はぐらかして柊一から離れて行った。
そしてそれは、お前自身が愛の口から聞かなきゃいけない事なんだよ、とも思った。
でなければ、愛と柊一の間の川には永遠に橋はかかるまい。
しかし、何とか橋脚くらいはこしらえてやりたいのだが、といつも考えてはいる明だった。
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