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第二章・12

 翌朝、愛はいつもより早く身支度を整えた。  朝食を摂りに食堂へ行く前に、水で体を清めたかったのだ。  昨夜のままで、柊一の前に出たくはなかった。  ところが、愛の小さな願いは残念ながら叶わなかった。 「おはよう。よく眠れたか?」 「冬月様」  いつもより早く、柊一が宿舎の玄関で待っていたのだ。 「寝坊助の明がいない分、今朝は早いだろうと思ってな」  そう言って柊一は笑ったが、愛は笑えなかった。  食堂への道を並んで歩く間中、体に染みついている昨夜の痕や臭いが柊一に気づかれやしないかと冷や汗をかいていた。

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