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第二章・13
騒々しい食堂に着いて、ようやく愛は人心地着いた。
あふれる食べ物の匂い、雑多な人々の匂い。
普段は苦手な香りだが、自分の汚れをこれらがかき消してくれるような気がした。
「おはようございます。岬さん」
おっとりとした温和な声が、愛の心をさらに解きほぐしてくれた。
「おはよう。奥(おく)くん」
牡羊座の大魔闘士であるこの少年は、いつも穏やかな笑顔で接してくれる。
自分より二つ年下という事もあって、愛はすぐに奥と親しくなる事ができた。
「今朝は左近充さんと一緒ではないのですね」
「うん。魔導殿のお役目があるから」
奥が少しだけ顔を曇らせたのが気になったが、そのまま別れて柊一と一緒に席に着いた。
いつもは明が二人の間を取り持つように、いろいろな話で盛り上げてくれるのだが、今日は二人だけだ。
何か話題を、と愛は一生懸命考えたが、あたりさわりのない天気の話や日頃の修練の話にしかならないことがもどかしかった。
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