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第二章・18
「愛が何か」
「ちょっと気になることがあってね」
「気になる事?」
うん、と瀬戸内は腕組みをして柊一を見つめた。
「あの子、医者に体を見せるのを嫌がるんだよ」
それどころか、と瀬戸内は続けた。
「大人と眼を合わせようとしないんだ」
男医が怖いのかと考え、瀬戸内が診ようとしても結果は同じだという。
体を見せたがらないし、眼も合わせようとしない。
言葉遣いや物腰は、いたって丁寧である。
だがそれとは裏腹に、完全に大人を拒否しているのだ。
「あんた、岬と仲いいだろ。何か心当たりはないかい?」
「……いえ」
その場はすぐに別れたが、柊一は瀬戸内の言葉に思い当たるふしがあった。
以前、稽古をつけてくれた魔闘士相手に礼をする際、眼を見ていなかったと注意したことがあったのだ。
目上の人間への礼節は大事にするものだ、と柊一は愛に伝えたが、あの時の魔闘士も成人していた。
大人の魔闘士をはじめ、教官や神官に対してはどうだったか。
あいさつはするが、やはり眼を合わせずに済ませてはいなかったか。
柊一はそんな事を考えながら、パン屋へと向かった。
朝食は全て吐き戻してしまったのだ。愛は、お腹がすいているに違いない。
修練の休憩時間に、何かつまむものがあった方がいいだろう。
シュークリーム……、の、隣のクロワッサンを二つ包んでもらった。
やはり、甘いものはダメだ。
でも、クロワッサンなら柔らかいし食べやすいので、愛も口にするかもしれない。
それとレモン水を水筒に詰め、柊一は愛が汗を流している修練場へと足を運んだ。
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