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第二章・20
「じゃあ、稗田先生は私の先生をご存じなんですか?」
「知ってるも何も、同期だよ。まさか、教官から神官に転職するとは思ってなかったがね」
あいつめ高等神官への道も近いな、こんなに優秀な弟子を育てたんだから、と稗田は愛の白い手をとった。
「優秀だなんて、そんな」
「最優秀だよ。なんたって大魔闘士なんだから」
稗田は、明るい声でしきりに愛の事を誉めそやしている。
普通なら、褒められれば気分はいいはずなのだが、愛の心にはどんよりと暗雲が立ち込め始めていた。
手の甲、指、そして指と指の間。
稗田の分厚い湿った手のひらと太い指は、愛の華奢な手をどんどん蹂躙していく。
「今でも、あいつとはたまに会ってるんだろ?」
「はい」
汗ばんだ手は、愛の手から腕、肩、首、そして頬へと登ってゆく。
「そして、こんなコトしてるんだろ?」
愛の頬を押さえながら、稗田はその唇に親指を這わせた。
「やめてください」
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