98 / 259

第二章・20

「じゃあ、稗田先生は私の先生をご存じなんですか?」 「知ってるも何も、同期だよ。まさか、教官から神官に転職するとは思ってなかったがね」  あいつめ高等神官への道も近いな、こんなに優秀な弟子を育てたんだから、と稗田は愛の白い手をとった。 「優秀だなんて、そんな」 「最優秀だよ。なんたって大魔闘士なんだから」  稗田は、明るい声でしきりに愛の事を誉めそやしている。  普通なら、褒められれば気分はいいはずなのだが、愛の心にはどんよりと暗雲が立ち込め始めていた。  手の甲、指、そして指と指の間。  稗田の分厚い湿った手のひらと太い指は、愛の華奢な手をどんどん蹂躙していく。 「今でも、あいつとはたまに会ってるんだろ?」 「はい」  汗ばんだ手は、愛の手から腕、肩、首、そして頬へと登ってゆく。 「そして、こんなコトしてるんだろ?」  愛の頬を押さえながら、稗田はその唇に親指を這わせた。 「やめてください」

ともだちにシェアしよう!