99 / 259

第二章・21

 身をよじって逃れようとする愛を、へらへら笑いながら稗田は揶揄した。 「どうぜ風俗に居たんだろ。いまさら勿体つけるなよ。大魔闘士様」  その言葉が終わるか終らぬうちに、稗田は激しい力で愛から吹っ飛ばされた。 「やめろ!」 「冬月様!?」    愛は飛び上がるほど驚いた後、瞬間的に顔に血を昇らせた。  まさか、今の話を聞かれていたのではないだろうか。  稗田は、自分を突き飛ばした相手が柊一だと解かると、少しだけ慌てた。  こいつは一筋縄ではいかない堅物のお出ましだ。  だが、しょせんは少年。  大人の稗田はしたたかだった。

ともだちにシェアしよう!