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第二章・25
「おはよう、愛。よく眠れたか?」
朝、いつもと変わらず共同宿舎の玄関に待っていた柊一に愛は一瞬目を丸くしたが、すぐに顔を伏せた。
「……はい」
蚊の鳴くような小さな返事に、明はふたりの間の妙な空気に勘付いた。
(何かあったな)
食堂への道すがらや食事を摂りながらの会話もどこかちぐはぐで、通常の3倍はがんばった明にも、その空気の色を変えることはできなかった。
今朝も、愛はほとんど食事を口にすることができない。
いや、以前よりひどくなったような気さえする。
せめて、食事の時間は楽しいものなんだ、ということを、明は愛に教えたかった。
何かなかったか。楽しい話題は。
愛が興味を引くような、笑顔を見せるような話は。
「そういえば、もうすぐだな。蚤の市」
明は、とっておきの情報を口にした。
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