105 / 259
第二章・27
「柊一、お前また石屋やるのかよ」
「石屋? 冬月様が石屋さん?」
今日、初めて自分の方をしっかりと向いた愛に、柊一は緊張した。
(俺が愛を思う気持ちに変わりがない事を、ちゃんと伝えなければ)
「ああ。俺はまた石を売るつもりだ」
(ハッ! 一言で終わらせてしまった!)
明と愛は続く言葉を待ったが、緊張している柊一の口からは巧く言葉が出てこない。
仕方なく、明が補足を加えた。
「柊一はよ、魔術で石を切り出してさ、ブロック状にして売りに出すんだ。結構売れるんだよな、これが。な?」
「ああ。実用的だからな」
(ハッ! また一言で済ませてしまった!)
この間抜け、という明の心の声が聞こえてきそうだった。
せっかくお膳立てしてもらっているというのに、何をやっているのだ。俺は。
「オレたちも、何か店だそうか」
明が、取り繕うように愛の方に会話を投げた。
どうしようかな、などと言いながら、愛はかすかに微笑んでいる。
(言うなら、今だ!)
柊一は、勇気を振り絞って自ら語り始めた。
ともだちにシェアしよう!