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第二章・29

「何てこと言うんだ! 馬鹿かお前は! デリカシーってもんがねえのか!?」 「おっ俺はただ、思っていることを」 「いかがわしい、なんて言えば傷つくに決まってンだろ! このアホ!」  しまった、と気づいてももう遅い。  これで愛との間には、さらに深い溝ができてしまったに違いない。  柊一は頭を抱えた。  明の姿はもう消えている。後を追って、慰めるつもりなのだろう。  料理の残ったトレイが、テーブルに3つ。  もう食べる気も失せた。  柊一はうつむいたまま、ジャガイモをフォークで転がしてため息をついた。  どうして俺は、こう考えを言葉にするのが下手なんだろう。 「どうした? ちゃんと食べなきゃダメだぞ」 「東郷さん」  空のスープ皿を手に、射手座の大魔闘士・東郷正人(とうごう まさと)が柊一の顔を覗き込んでいた。  おかわりをするつもりで席を立ったのだが、どんよりと落ち込んだ柊一が目に留まったのだ。 「何か心配事でもあって、喉を通らないのか?」  柊一は東郷を見上げた。  相談して、何か巧い考えを伝授してくれるだろうか、この人は。

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