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第二章・30
「俺は、話すのが下手なんです」
「確かにそうだな!」
あぁ、と柊一は再び頭を抱えた。
やはり、脳筋と名高いこの人に相談する方が間違っているのだ。
いや、実のところ柊一の言葉は相談にすらなっていないのだが。
しかし、東郷は一条の光明を柊一に与えた。
「話すのが苦手なら、行動で示せばいい」
男は黙って行動だ、と東郷は一人で熱く腕を振り上げながら、スープのおかわりへと向かった。
彼にしてみれば、本当にささいな一言だったのだが、柊一を開眼させるには充分だった。
(行動で示す)
柊一は、勢いよく席を立った。
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