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第二章・33
「不器用なヤツだな。いいか? そういう時は穴を開けようと思うんじゃなくって、穴を作ろうと感じるんだ」
そう言って明は、手にしたブロックの中央に人差し指を静かに乗せた。
かぼん、と軽い音がして、ブロックは見事に植木鉢へと変身した。
「どうよ?」
得意げな明の顔。
悔しいが、本当にこの男は器用だ。
(開けるのではなく、作る)
そう考えながら、柊一はもう一度試してみた。
今度は、ブロックは真二つには割れなかった。
多少厚みに凹凸はあるが、石は何とか植木鉢らしきものになってくれた。
「それで? 今度は石屋はやめて植木鉢屋になるのか?」
「いや」
できたての植木鉢を手の中でいじりながら、柊一はもごもごと何やらつぶやいている。
「つまり、その、これに土を入れてだな。それから花を植えてだな。つまりだな」
「ようするに、鉢植えを作るのか」
「そう、それだ」
で? と手を腰に当てて、明は柊一を眺めやった。
「お詫びのしるしに、愛に花をプレゼントか?」
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