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第二章・35
朝、あんなに泣いていたはずの愛は、きりりと引き締まった顔で修練に身を入れていた。
こういうところはやはり、ただの美しいだけの少年ではない。
ああ見えて、自己に厳しい。
そんな愛の一面が、柊一は好きだった。
休憩時間になり、木陰にやってきた愛は、そこに待ち構えていた柊一を見て少し困ったような悲しいような顔をしたが、すぐに笑顔を作った。
「どうしたんですか? 冬月様」
きれいな花、と愛は柊一の手の中の鉢植えを見て顔をほころばせた。
「お前に、プレゼントだとよ」
明が先まわりしてそう言ったが、柊一は大きくかぶりを振った。
「違う。プレゼントじゃない」
え? と明も愛も、不思議そうな顔をした。
真っ直ぐな性格の柊一らしくない言葉だ。
プレゼントでなければ、なんだというのだ。
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