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第二章・37
「すまん。忘れてくれ」
そう呟いてきびすを返そうとした瞬間、柊一の服の裾がしっかりと掴まれてその歩みをはばんだ。
「やりたい。お花屋さん」
愛は、柊一の眼をしっかりと見てそう言った。
何ィ? と明が笑うのをやめた。
乗り気なのか? 愛は。
「私、冬月様とお花屋さんがやりたい」
は、と柊一は改めて愛を見た。
『やりたいです』ではなく、『やりたい』。
わずかだが、これまでよりくだけたその物言いに、柊一はぱあっと心が晴れた。
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