116 / 259
第二章・38
柊一に花屋なんて大丈夫なのかよ、と明はぼやいていたが、結局は3人で花屋を出すこととなった。
まずは植木鉢の準備だ。
ぶつぶつ言っていたわりには乗り気の明は、わざわざ海岸まで行って角の取れた丸い石を何個も抱えてきた。
「四角いだけじゃ、つまんねえだろ」
明の丸い石を見て、柊一はいぶかしげな顔を作った。
「なぜだ。統率のとれた四角の方が、並べやすいだろう」
「バッカ。最近はよ、ナチュラル志向でこういう自然っぽいのがウケるんだよ」
「くだらん。四角でいい!」
「丸い方が売れるって!」
ぎゃあぎゃあと言い合いになって、仕事は全く進まない。
「二人とも、いい加減にして! ケンカしないで!」
愛の一声で、論争は一瞬にしてやんだ。
(愛が、俺に対しても怒った)
これまで、柊一の前では借りてきた猫のようにおとなしかった愛が、感情をあらわにしている。
柊一はその事が無性にうれしく、顔をほころばせた。
「何だ、ニヤニヤしやがって。気味の悪いヤツだな」
明はそう言いながらも柊一の気持ちが解かっているらしく、肩をぽんと叩いてきた。
柊一もそれに応えて、にっこりと笑った。
ともだちにシェアしよう!