117 / 259

第二章・39

 この計画は、どうやら大成功の匂いがする。    二人はもう言い合いをせず、互いに丸い植木鉢と四角い植木鉢をこしらえることに専念した。  腐葉土は、林に行けば手に入る。  花の苗は、花壇の外にこぼれ種で増えたものがいくつもある。そいつを拝借しよう。  植物を活かす力を持つ愛の魔力は、植え替えのダメージを受けた花の苗を優しく包み、まるで本物の園芸店に並んでいるかのような立派な鉢植えが出来上がった。  市の立つ日、明は荷車を引っ張ってきた柊一を見て呆れた顔をした。 「俺がテレポーテーションで売り場まで運んでやるよ。わざわざ重いもん足で運ぶこたぁねえ」 「いや、テレポートだとまずい」  柊一は、テレポーテーションができない。  それどころか、他人のテレポートに乗せて運んでもらってもひどい異次元酔いに見舞われる。  せっかくのハレの日に具合が悪くなりました、では残念すぎる。 「じゃあ、明はテレポートで荷物と先に行って。私は冬月様と一緒に、後からゆっくり行くから」    愛はそう言うと、柊一の腕に手を回した。  それはごく自然な仕草で、さらに距離の縮んだ行動に柊一は舞い上がる気持ちだった。

ともだちにシェアしよう!