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第二章・40
「馬鹿野郎。なんでオレひとりが、イモ引かなきゃなんねえんだよ」
一緒に後からゆっくり、などと言われてニヤけている柊一の顔が無性に腹立たしい。
明は、もくもくと鉢植えを荷車に積み始めた。
「おい、ボヤボヤすんな。行くぞ」
荷車の前を引くのは、明。
柊一と愛は、二人で後ろから押した。
距離がもっともっと縮まるように、気を利かせてくれたに違いない。
明には何かお礼をしなければならないだろうな、と考えながら、柊一は荷車を押した。
隣で一緒に押している愛は、その汗すらバラのような香りがする。
こいつはつくづく力仕事の似合わない人間だ、と柊一は少し心配になってきた。
荷車が重すぎて、途中で倒れたりしないだろうか。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
(はい、じゃなくて、うん! 大丈夫です、じゃなくて、大丈夫!)
「そうか。大丈夫か」
柊一の荷車を押す力が瞬発的に上がって、前にいた明は大声をあげた。
「馬鹿野郎! 急にぐんぐん押すんじゃねえ!」
まぁ、後ろで何があっているかはだいたい想像がつく。
これは大きな貸しになるな、と明は口笛を吹いた。
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