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第二章・44

 女性は温厚な笑顔をたたえていたが、愛の心臓はばくばくと高鳴るばかりだった。  以前働かされていたお店にも、女の客は時折やって来た。  こんな風に優しそうな笑顔をたちまちのうちに引き攣らせ、背中の皮が全部はがれてしまうほど鞭でぶつのだ。  男より、女の方が残忍なことが多かった。 「どれがお勧めかしら」  そんな愛の気持ちも知らず、女性はにこやかに話しかけてくる。  もうだめ。吐きそう、と思った時、柊一がぐっと手を握ってきた。 (大丈夫。俺が、俺たちがついてる)  柊一の言葉が、愛の胸によみがえった。  握られた手のひらから、温かい力が伝わる。

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