123 / 259
第二章・45
「そうですねぇ。お姉さんなら、どの花でも似合いそうですが……」
おどけた声を含ませて、代わりに明が会話を続けた。
愛を見る眼は、心配そうな色ではあったが、いざというときはオレが何とかするから、と語っていた。
「あ、あの。こちらの花の色は、お客様の瞳の色と同じです」
愛が差し出した鉢植えの花はブルーで、確かに女性のカラーコンタクトと同じ色を持っていた。
「いいわね。つぼみもたくさん付いてるし。じゃあ、それをいただくわ」
「ありがとうございます!」
代金だけでなく小さな袋に入ったお菓子まで愛に与えて、女性は雑踏の中に消えて行った。
「瞳の色と同じ、って」
柊一は、愛を見つめた。
「眼を、大人の眼を見たのか? 見られたのか!?」
愛は、小さくうなずいた。
やったぜ、と明が派手に指を鳴らした。
大人を拒絶し、その眼をまともにみることができなかった愛が!
「おう、幸先いいなぁ。これは先を越されたな」
熊のような金物屋が、親しげに話しかけてきた。
「私もひとつもらおうかしら」
トカゲのような古着屋が、楽しげに言ってきた。
どちらの大人も、溶けるように優しい眼をしている。
愛は、柊一と明を交互に見て、にっこりと笑った。
ともだちにシェアしよう!