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第三章 恋のキューピッド ~発端~

 明け方、明は慌てて二段ベッドの上から下へ降りた。  魔導学校の、共同宿舎。  美貌の親友・ 愛が夜這いを掛けられたりしないよう、明は大魔闘士という位でありながら、彼と同室にしてもらっていた。  候補生の寝泊まりする、狭くて埃っぽい質素な寮に厄介になっていた。 「おい、愛。大丈夫か、起きろ」 「うぅ……、んッ。あぁ!」 「愛!」  明は、うなされている愛の体に手をかけて、揺さぶった。  そこでようやく、愛は眼を開く。  苦悶の表情で。 「起きたか。しっかりしろ」 「あ……、明」  ここで、抱きついてきて震えていたら、愛はその悲しい過去を悪夢に見ていた時だ。  心無い大人に、性の食い物にされていた頃のおぞましい夢を。

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