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第三章・2
「安心しろ、オレがついてる」
そう言ってなだめ、髪を撫でたり手を握ったりしてやると、やがて愛はまた眠りに就く。
その美しい顔を、良い匂いを間近に感じていると、明にもむらむらと性欲が頭をもたげてくる時もある。
だが、愛の生い立ちを考えると、ブレーキがかかる。
これ以上、彼を苦しめることなどできやしない。
一方で、こうも考える。
俺で力になれないか?
俺とホントに気持ち悦い、ハッピーなセックスを体験させてあげられないか?
「待てよ、オレ。恋人同士でも何でもないだろうがよ」
そう自分に言い聞かせて、もう一度眠りに就く。
明と愛との間にしばしば起きる、何とももどかしい習慣だった。
「オレ、愛の事が」
好きだ、という言葉は、枕に沁み込ませる。
愛はオレのことを、ただの親友だと思ってるかもしれないじゃないか。
それでも、いつか伝えたい、好きという言葉だった。
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