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第三章・5

 ただ、わけもわからずこのまま殴られ続けるのは、プライドが許さない。  柊一は力任せに明を引きはがし、脚をたたんで彼の腹に当て渾身の力で蹴りのめした。 「ぐぅッ!」  変な声を上げて後ろに吹っ飛んだ明だが、柊一が体勢を立て直す間もなく再び突っ込んでくる。  二人は互いの両掌を握り合わせ、押し合う形となった。  顔が真っ赤になるまで押し合うが、どちらも一歩も引かないため、その場からびくとも動かない。 「何だ、何だ」 「喧嘩だ!」  辺りに人がちらほら現れ始めた時、両の均衡が大きく崩れた。  ガツン!    明と柊一の目の前は一瞬真っ白になり、その後頭がわんわんと痛んできた。 「喧嘩両成敗!」  大きく豊かな声がふたりの頭上に響く。  東郷 正人(とうごう まさと)だ。  東郷が明と柊一の頭を押さえ、思い切りぶつけ合ったのだ。

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