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第三章・6

「何があったか知らんが、ケンカはよくないぞ」  東郷はにっこりと笑うと、今度は二人の手を取った。 「さぁ、握手だ。仲直りするんだ」  柊一は、素直に明の手を握ってきた。  だが明は東郷をひとつ睨むと、そのまま駆け出して行ってしまった。 「左近充」  東郷はその後姿をきょとんと眺めた後、柊一の方へと向き直った。 「冬月、一体何があったんだ?」 「解かりません」  ただじんじんと痛む顔を手のひらで抑えながら、柊一はそう答えるしかなかった。

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