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第三章・8

 出会ってから数か月だが、愛の勘の良さには時々舌を巻く。  だが正直にそうだと言えば、また何かと心配してくるだろう。  明は問いかけには答えず、ひとつ笑うとポケットに手を入れた。 「あ」  ポケットの中のタバコの箱は、当然ぐしゃぐしゃに濡れていた。  ちょッ、と軽く舌打ちをして泉からざぶざぶ上がると、背を伸ばしてほとりの大木のうろに手を突っ込んだ。 「へへへ」  隠しておいたタバコの箱をひょいとかざしてみせると、愛はにこりと笑った。  用意周到な事だ。  愛は腰の小さなホルダーのボタンを開けると、中からライターを取り出した。  小さく灯された炎に明が口にくわえたタバコを近づけると、その炎がやたらゆらゆらと揺らめいている。  見ると、愛の手が小刻みに震えているのだ。 「どうしたんだ」  今度は明の方が愛に問いかけた。  ライターの火を消し、愛は手を押さえた。 「今日は力をつける訓練をしたから、腕が疲れちゃって」 「力をつける訓練?」 「うん。大きな石を何個も何度も持ち上げるんだ。なかなか頭の上まで上がらなくて、困っちゃった」

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