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第三章・16

「よし! じゃあ作戦開始だ!」 「了解!」  にこにこと、愛は嬉しそうである。  三人そろって何かを企むということが楽しくて仕方がないのだ。 「いや、待て。明、お前は何をするんだ」  柊一は、はたと気が付いた。  言い出しっぺの明が、何もしないというのはおかしいではないか。 「オレか? オレはちょいとした細工物を作るぜ」 「あ。私、銀の髪留めが欲しいな」 「おぅ、ついでに作ってやるぜ」  何をこしらえるつもりだ、と柊一は再び不安になってきた。  明のヤツ、自分が考えている以上に、とんでもない事を企んでいるのではあるまいか。  ま、できたら見せるからよ、と笑った後、明は思い出したように大きなくしゃみをした。 「大変。早く着替えないと風邪ひくよ」  愛が明の背中を押し、三人はあたふたと泉を後にした。  水面はすっかり静まりきらきらと美しく輝いていたが、それは嵐の前の静けさのようでもあった。

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