144 / 259

第三章・17 ~作戦実行~

 翌日、修練場で東郷は柊一の連れを見て目を丸くした。 「川嶋? どうしてここに」 「冬月に頼まれてね。しばらくここで一緒に稽古に加わるからよろしく!」    東郷は口をぽかんと開けたまま、柊一に視線を移した。  柊一は何やらばつの悪そうな顔をして、明後日の方を向いている。 「足技を究めたいらしくてね。ま、確かに蹴りなら東郷、あんたにも負けないからね!」  にっ、と笑った川嶋の口から、白い歯がこぼれた。  日に焼けた顔に映えるさわやかな仕草は、東郷の眼にまぶしく映る。  川嶋は東郷の一つ年上で19歳だ。  慣習にとらわれない奔放な性格で、姉御肌で面倒見がいい。  女子たちの間で、親衛隊が結成されているほどの人気者だ。 『女版東郷』とささやく者たちもおり、おおらかで大勢の人間に慕われている点は、なるほど彼によく似ていた。

ともだちにシェアしよう!