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第三章・19

 照れ隠しに川嶋の方を向くと、彼女は慌てたようにそっぽを向いてしまった。 「え? あれ?」  川嶋ならば、何やってるんだか、と笑い飛ばしてくれると思っていた東郷だったが、あてが外れた。  ますます持って照れくさいではないか。 「冬月、今日の稽古はここまでだよ!」 「はい?」  すばやく立ち上がった川嶋は、柊一をおいてさっさとその場から離れてしまった。 「急にどうしたんだ。川嶋は」 「さあ」  あれあれあれれ? 川嶋様ったらもしかして、やきもちを?  勘づくことができたのは、愛ただひとり。  鈍感な東郷と柊一は、ひたすらサンドウィッチを口に運ぶしか能がなかった。

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