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第三章・24

「バレるわけねえよ。そんなもん、もうどこにもねえんだし」 「東郷さんに、どんな命令書を書いたんだ。言え」 「それは言えねえ。お前、隠し事は苦手だからな」  心配するな、と明は髪留めを愛の頭に飾りながらにんまりと笑った。 「悪いようにはしねえよ。すべては東郷の情操教育のためなんだぜ?」  不審そうな柊一の肩を軽くぽんぽんと叩きながら、明は陽気な声をあげた。 「命令書はもう一通作ってあるんだ。頃合いを見てお前にも教えるからよ。楽しみにしてなって」  残念ながら、今回は明の良心を信じるしかないらしい。  柊一は、そんなものあるんだろうかと内心疑問に感じながらも、それに一縷の望みを託すことにした。

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