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第三章・25 ~大成功~
「うっ!」
みぞおちに鋭い蹴りを喰らい、東郷はうめき声をあげた。
ぱちぱちぱち、と拍手が鳴る。
「やったじゃないか、冬月。これで今日3発目だよ!」
川嶋が嬉しそうに声を上げた。
うずくまる東郷も首を上げ、柊一に笑顔を向ける。
「すごい上達ぶりだ。冬月」
照れ笑いを浮かべながらも、柊一はやはり東郷の動きが鈍い事が気になった。
「あの、東郷さん」
「何だ」
「その、どこか具合でも? いつもより動きが悪い」
それはあんたが上達したからそう感じるんだよ、と川嶋は立ち上がる東郷に手を貸しながらはずんだ声をたてた。
「だらしないよ、東郷。冬月に追い越されるのも、時間の問題だね」
「指導者がいいからだな。さすがだ、川嶋」
東郷は川嶋の手を取ると、弾みをつけて地面から尻をあげた。
革の手袋越しだが、東郷の手のひらの温かさが伝わってくる。
うっすらと赤く染まった川嶋の頬を、愛は見逃さなかった。
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