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第三章・28
愛はもうお手上げだった。
これは本物だ。
川嶋は東郷の事が、大好きなのだ。
でなければ、これほど先手を打って行動してくるわけがない。
(ごめん、明。もう東郷様に親切にするのは無理みたいだ)
愛は東郷ではなく柊一の横に腰をおろし、川嶋の作ってくれたサンドウィッチをほおばった。
「おいしい! ね、東郷様。おいしいですよね!?」
話題を振られ、東郷は何か言わないわけにはいかなかった。
「お? おぉ、うまい。川嶋、いつの間に料理を?」
えへへ、と笑った後、川嶋は少しためらった後に意外な事を話し始めた。
「あたしさ、もうじき魔闘士辞めようと思ってるから。だから、料理くらいできないとね」
「何ィ!?」
東郷の口から飛んだピクルスが、柊一の頬に付いてしまったが、彼もそれを取る心の余裕はなかった。
川嶋ほどの実力の持ち主が魔闘士を辞めるなど、いきなりどうして。
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