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第三章・30

 愛からの報告を受けて、明は楽しそうに笑った。  もくろみは思い通りに運んでいるらしい。 「いいの? 私、もう東郷様に親切にできないよ」    川嶋があれほど大胆な行動に出たら、それを押しのけてまで東郷にまとわりつくことなど愛にはできなかった。 「いいんだよ。川嶋がそうなるように仕向けることが、お前の役目だったんだから」  愛は解かったような解からないような気持ちになったが、最終的には微笑んだ。  明の指示が巧くいって、川嶋と東郷がこれまで以上に親密になれるというのなら、それに越したことはない。 「しかし、東郷さんは何だか変だったぞ」  柊一は、思った通りの事を口にした。  言葉にはしにくいが、川嶋に対しての東郷の態度が妙だということは解かる。 「それも計画通りなんだよ」  明は満足げにうなずくと、二人の頭を寄せた。

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