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第三章・33

 14時の10分前、愛と柊一はくだんの場所に身をひそめていた。  午後の修練は自習、との東郷の言葉に、これはやはり明の言う通り何かあるのだ、という期待と不安をそれぞれ抱いて待った。 「よう。早かったな」  明も、5分前にはその場に現れた。 「どんな様子だ?」 「川嶋様と何人かの女の人たちが中に入っていったよ」 「よし、それでいいんだ。柊一、何か見えるか」 「誰か来たぞ。あれは……、東郷さんじゃないか!?」  203号室の前に現れた東郷は、ドアの前をぐるぐる回ったり、かと思えばしゃがみこんでみたりと落ち着かない。  部屋の中からは、女子のにぎやかな笑い声が時折響いてくる。  だが何を話しているのかは、東郷には聞き取れなかった。 「亜希、本当にこの部屋使っちゃってもいいの?」 「構わないさ。どうせ遊んでる部屋なんだし、誰も来やしないって」 「同感同感♪ 女子更衣室って狭いもんね。おまけに古いし」 「あんなところでギュウギュウ詰めで着替えるより、ここを使った方が早く済むってこと」  何と女子たちは、普段使われていない203号室を更衣室代わりに使っていたのだ。  誰も知らない、自分たちだけの秘密。

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